冷えのある方は夏にはエアコン、冬には外気温と一年中つらいものです。
今回はその冷えをとるためにお勧めの飲み物を紹介します。
冷えがある、とは
特に決まった病名がある訳ではありません。
しかし、手足の先が冷えるので、なんとかならないかとお医者さんに相談する人もいらっしゃると思います。
冷えとり的には上半身と下半身の温度差のことを「冷え」と呼んでいます。
これは東洋医学的な根拠のない考え方だ、と思われるかもしれませんが、
西洋医学でも冷え性は手足の先などの末梢の血液障害であるという意見が多くなっています。
末梢の血液障害がおこる病気としてはわかりやすいもので言うと糖尿病などがあります。
まずはそのような病気がある場合にはその病気を治すことが一番なのですが・・・
治療と同時に冷えとりを取り入れていけるといいと思います。
また、一見健康だと思われる人でも冷えは存在します。
この場合には自律神経の調整不良による血管運動神経障害が原因になっていると言われています。
自律神経の調整不良は女性ホルモンのバランス異常、ストレス、ダイエットにより発生しますが、そのほかの原因もあるかもしれません。
実際に冷えがある人では体の中心部の体温(上半身)と足先の皮膚温では6~9℃の差があります。
また暖かいと感じる温度が高い(温度感覚閾値【おんどかんかくいきち】)ことも知られています。
<参考資料> 尾形優 他:冷え症の生理学的メカニズムについて―循環動態および自律神経活動指標による評価― 日本看護技術学会誌 2017 年 15 巻 3 号 p. 227-234 https://doi.org/10.18892/jsnas.15.3_227
暖かい飲み物を飲むと「体が温まる」と感じるので、冷えの症状が取れることがあります。
のどが渇くと飲み物が飲みたくなりますが、コップ一杯の水を飲むだけでその渇きは解消します。
実際に必要な量の水分ではなくても、のどに水が通過するとその信号が脳に伝わり渇きが癒されるのです。
また炭酸水は炭酸の刺激によって体温を下げることが分かっているので、冷え性の人はあまり飲まない方がいいでしょう。
<参考資料> 講演会:―水分補給のサイエンス― 講演2「水分補給の生理学メカニズムと熱中症の予防」鷹股亮 講演記録 http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/BOOK/Newsletter/Water-2-NL_1006.pdf 高木 絢加 他:炭酸水による口腔への刺激が深部・末梢体温に及ぼす作用―Sham-feeding (偽飲) による口腔内刺激を用いた評価― 日本栄養・食糧学会誌 2014 年 67 巻 1 号 p. 19-25 https://doi.org/10.4327/jsnfs.67.19
白湯【さゆ】
白湯とは文字通り水を沸かしたものです。インドの医学アーユルヴェーダ沿った健康法をされている方にはなじみのものですね!
白湯は、飲むことによって全身の血流が改善することが知られています。
これは、白湯がのどを通ることによって「暖かい」という快感が脳に伝わること、胃が刺激されることによって副交感神経系が刺激されて血管が広がること、
首の血管が暖められることにより脳が「暖かい」という快感が先に立ち、足先からくる「寒い」という不快感が抑えられるという働きによるものです。
朝食前に飲むことによって、白湯の効果が増すと言われます。
これは、睡眠中は絶食、絶飲状態であるので目覚めの時には脱水状態であること、体内時計にスイッチが入るという二つの理由からです。
目覚めの際には脱水状態にあってもあまりのどが渇いたという気持ちはわきません。
これは副交感神経が高まっているためです。副交感神経は体を休めて、疲労を取るために働いているので「渇き」のような不快感で目が覚めないようにその不快感を抑えているためです。
体内時計は一日の初めにリセットされます。リセットするための刺激は光が一番といわれていますが、飲みものを飲むことによってもリセットされることが知られています。
<参考資料>
山王丸靖子他:若年女性の冷えと食および生活習慣との関連 日本食生活学会誌 2016 年 26 巻 4 号 p. 197-204
https://doi.org/10.2740/jisdh.26.197
佐々尚美 若齢女性における冷え感の改善に関する研究 : 冬期における暖める部位の検討
人間と生活環境 2010 年 17 巻 2 号 p. 49-55
https://doi.org/10.24538/jhesj.17.2_49
ハーブティ
ハーブティはハーブを煎じたものです。
ですからこの場合の「ティー」は、日本語の「茶」の意味とは異なります。
ハーブとは本来「人に役立つ植物で茎が気にならず柔らかく開花後は朽ちる植物」と定義されています。
アイタデやあるアルカネットのように染め物に使われるものやセンブリなど漢方薬の生薬になるもの、
カモミールの様に欧州で体の調子を整える代替医療に用いられるものなどスパイス(香辛料)に比べて広い範囲をカバーしている言葉です。
日本では欧米で代替医療として認められている植物をさすことが多いようです。
ハーブを現在でいう代替治療として用いた歴史はとても古いものです。紀元前3000年前のシューメールにハーブを使った記録が残っています。
お腹の調子が悪い時に飼い犬が雑草を食べることを考えると、ハーブを人間が使う事は本能に基づいたものかもしれません。
白湯でも冷えを取る効果があるので、人への直接効果が知られているハーブを煎じたハーブティはさらに冷えとりに効果があります。
ハーブティの体に良い成分は医薬品のように一つのハーブに一つの成分という訳ではありません。
様々な成分がハーブには含まれています。その成分はハーブティに染み出て、消化管から吸収されて体内で働きます。
また、揮発性の成分では香りとして鼻の神経を刺激して、脳に届き作用を示す場合もあります。
いくつもの成分が含まれていますが、医薬品の様に即効性は少ないと考えられていますが、成分がお互いに影響しあって作用(相互作用)を強くしている可能性があります。
(当然逆の場合も想定できますが、各成分の相互作用に関する研究はほとんどありません。各ハーブとしての評価があるだけです。)
ハーブティをよりよく楽しむためには、実際に手元で栽培することをおすすめします。
新鮮な香りが楽しめるからです。
この香りは栽培することによってしか手に入れることはできません。
ですが、忙しく、栽培している時間のない人がハーブティを楽しむためにはドライハーブは役に立ちます。
また、いろいろなハーブを楽しむためにはドライハーブの方が簡単です。
一般的にハーブティは苦みや個性的な香りがします。
そのため苦手だという人もいますがその場合には、甘みのあるハーブのリコリスやステビアをブレンドするのもお勧めです。
また甘味料として有用な成分が含まれているはちみつを使ってみるのもいいかもしれません。
せっかく自然の恵みをいただくのですから、人工甘味料は避けた方がいいでしょう。
砂糖も完全に精製した白砂糖はあまりお勧めできません。
果物の力を借りるためにジャムを使う方をお勧めします。
<参考資料>
山元奈美 他:ハーブの日常生活への利用―特にハーブティについて
日本調理科学会誌 2016 年 49 巻 5 号 p. 333-336
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/49/5/49_333/_article/-char/ja
阿部 又信:連載講座 イヌ・ネコの基礎栄養 (2)食性、思考、食事の摂取量など ペット栄養学会誌 1999 年 2 巻 2 号 p. 70-77
https://doi.org/10.11266/jpan1998.2.2_70
ルイボスティー
ルイボスティーは一般的なハーブティとは異なり、その製造過程に発酵という手段が一つ入っているのが特徴です。
もともとは南アフリカのセダルバーク山脈の高地に生息するマメ科植物から作られたものです。
古くから先住民のあいだで薬用飲料として飲まれていました。
美しい紅色が特徴で第二次世界大戦のときに紅茶の品不足の代替品として普及しました。
日本に輸入され始めたのは、1990年代からでタンニン含量が低く、
カフェインが含まれないこととミネラル(鉄、マンガン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン、亜鉛、銅)が含まれることで、今注目を浴びています。
(カルシウムやカリウムはお茶(ウーロン茶、玄米茶、番茶、紅茶)にも含まれています。)
ルイボスティーは最近の研究で抗酸化作用があることが示されています。
ルイボスティーに含まれるポリフェノールがその作用を示していることが実験室的に明らかにされています。
ルイボスティーに含まれているポリフェノールが抗酸化作用を示すことが明らかになっても、ルイボスティーを引用した場合の抗酸化作用を示すかどうかは、人で引用した場合に抗酸化作用が示されるかどうかで初めて明らかになります。
ルイボスティーの抗酸化作用は人でも確かめられていますが、SODが上昇するという点は実際の抗酸化作用と矛盾する場合があるので、気を付けることが必要です。
【抗酸化作用とSOD】
人間が生きていくためには、酸素を肺から取り入れて細胞内に届けてエネルギーを創ることが必要です。
しかし、そのエネルギーを作る過程で過酸化酸素というものが作られます。
過酸化酸素は白血球が細菌を殺すときに用いることから毒性のある物質であることが分かります。
細胞内でエネルギーを算出した時に余分にできる過酸化酸素はSOD(Superoxide dismutase)という酵素で無毒化されます。
これは人間の体のホメオスタシス(恒常性)を保つための仕組みの一つです。
そのため、SODが増加すると言うことは体内の過酸化酸素の量が増えていると言う事です。
したがって、SODを増やす物質が必ずしも体内の酸化状態を改善しているのではなくて、促進している場合があるので注意が必要です。
ルイボスティと冷えとり
冷えとりに対するルイボスティのメリットは以下の通りです。
・暖かい飲み物であること。
・ミネラルはストレスを耐える力を高めるので、自律神経系の乱れに対して抑える方向に動きます。
・カフェインは交感神経系が優位する作用があるので、取りすぎないことがお勧めですが、そのためにカフェインを含まないルボスティがお勧めです。
・過酸化化酸素を抑えることによって、血管の老化が抑えられる可能性があるので、ルボスティの抗過酸化作用はその助けになります。
・ルボスティの鮮やかな紅色はそれを見るだけでもリラックスできます。
<参考資料>
人見英里他:ルイボスティー(Aspalathus linearis)の抗酸化性 日本食品化学工学会誌
1999 年 46 巻 12 号 p. 779-785
https://doi.org/10.3136/nskkk.46.779
ルイボスティー
日本SOD研究会 ルイボスティー特集
http://www.sod-jpn.org/pdf/rooibos.pdf
冷えは末端の体温が下がることによって生じます。
その温度調節には脳が大きな役割を果たしています。
飲み物はのどを通過することによって、信号を脳に送ることから暖かい飲み物を飲むことにより、温感は脳から末端まで広がることから暖かい飲み物には冷えとりに適しています。
リラックス効果も同じように脳からの信号で末端の体温を上げる効果があります。
暖かさとリラックス効果からハーブティをお勧めします。
ハーブティ以外ではルイボスティーもお勧めです。
ルイボスティーはお茶とは違いカフェインを含まないので、寝る前に飲んでも大丈夫です。
抗酸化作用を持つという説もありますので、肌の老化などが気になる場合にはルイボスティーを飲んでみるのもいいかも知れません。