今回Utataneでは漢方の先生に冷えとりをしている方にお勧めする漢方についてお伺いしました。
漢方に詳しい方もいらっしゃるかと思いますがお勉強のためにぜひ読んでいただき、
実践いただきたい内容となっております!
本格的に冬の季節に入り、今年は特に新型コロナウイルスの話題になっていますね。
これからは、気温も下がり空気も乾燥するので特に皆様には体調管理に気を付けて頂きたいと思います。
さて今回はお題にある冷え性にお勧めしたい漢方(東洋医学の基礎理論と実際の処方や生薬)について、漢方の専門家の目線で分かりやすく解説していきたいと思います。
では最初に冷えは、「冷たい、寒い」という感覚以外に、実際に身体にどのような影響を及ぼすと思いますか?
東洋医学では、まず冷えると「気」の流れが滞る【気滞】ということが起こります。
「気」というのは、実際には見えませんが、実は血液をぐるぐる循環させるエネルギーのようなものです。
つまり気が滞ると血の流れも滞り、血流の悪い部分に痛みを感じたり、塊や腫瘍ができやすくなったりします。
その他にも機能も落ちてしまったりするので、例えば肺が冷えてしまうと喘息になりやすくなりますし、鼻水が垂れてきます。
またお腹が冷えると下痢をしたり胃腸炎になりやすくなりますし、そして子宮などの婦人科系が冷えると、生理不順や不妊などにつながります。
私の臨床経験では、長引く病気や難病の多くは大抵身体の冷えが関係しているイメージがあり、たかが冷えとはいえ決してバカにはできないと思っています。
「冷えの主なタイプと特徴について」
主に中医学(中国では漢方を中医学といいます)的には冷えは陽虚(体を温める陽気が不足)、気虚(元気が足りない)、瘀血(血の巡りが良くない)の3タイプに分けられます。
ただし「気血両虚」のように気も血も不足しているように症状の重なる場合もあります。
ここではそれぞれの冷えの特徴と適応する漢方処方について解説したいと思います。
陽虚(体を温める陽気が不足)は基礎体温または基礎代謝の低下した状態をいいます。
ここでは難しい内容は省きますが、陽虚にも大きく2タイプに分かれます。
一つは老化現象に伴う冷え以外に夜間尿や足腰の弱りなどの不定愁訴がある状態です。
(中医学的には腎陽虚ともいいます。興味があれば調べてみてください。)
このようなタイプを腎陽虚といって身体を温める桂皮や附子の配合された八味地黄丸という処方がよく用いられます。
この処方はドラッグストアや通販でも販売されていますので、手に入りやすいと思います。
またここで紹介する漢方処方のほとんどは保険適応もしていますので、お近くの漢方外来のある病院で相談されてもよいかと思います。
ただ附子(トリカブトの根を加工して無毒化したもの)という身体を非常によく温めてくれる生薬が配合されているため、
可能ならば漢方の専門家に身体に合っているかを確認して服用されることをお勧めします。
(附子配合の処方は漢方処方の中で唯一劇薬扱いになり第?類医薬品となります)
もう一つは若い女性によく見られる冷えのパターンで老化現象を伴わない冷え性のパターンです。
このパターンは消化機能が弱い方によくみられ、食物から充分にエネルギーが得られない場合に起こります。
(中医学的には脾気虚ともいいます。興味があれば調べてみてください。)
消化機能が低下した方は若い女性だけでなく案外多くみられ、
例を挙げますと・・・食が細い、食べ過ぎるとすぐお腹を下すといったパターンです。
このような方は共通してエネルギーが不足がちで朝が弱い、声が小さい、食後眠くなるなど様々な症状を伴います。
これが有経の女性の場合、胃腸が十分に働かないため血の生成も追いつかず、冷え性に貧血や低血圧、ひどい場合は無月経や不妊症のような症状を引き起こす場合もあります。
このような場合、薬用人参(野菜に人参ではありません。薬用人参になります。野菜の人参と漢方で使用される人参は全然違う種類になるので気を付けてください)
や桂皮(シナモンとして食用でも使われてますよね)の配合された人参湯(お腹に効くという意味で理中湯ともいいます)や人参養栄湯という処方を使用します。
もし重度の冷え性であれば、先ほどの附子を1gほど加えて附子理中湯を使用する場合もありますし、
気血両虚といって気と血の両方が不足しているのであれば、血を増やす当帰や地黄という生薬の入った人参当芍散や十全大補湯といった処方が使われます。
これらの処方を使いますと、多くの方は身体が温まってきて面白いように元気を取り戻していきます。
先日も80歳を超えた方が、冷え性改善の漢方薬を服用したらすぐに体調がとても良くなり、あれは強い栄養剤が入っていますか?と質問されたりもしましたよ^^
次に瘀血(血の巡りが良くない)について解説していきたいと思います。
血の巡りが悪いといっても、血そのものが足りないので巡らないのか?
それとも血は足りているが気虚(エネルギー不足)や血の質が悪くて血行がわるいのか?によって処方が違ってきます。
血が足りない方では、血が増えるように胃腸機能を改善する人参や黄耆という生薬の入った人参湯や補中益気湯といった処方が使われます。
そして血行が悪く足しの冷えがひどい場合は温める働きのある生姜や呉茱萸の入った当帰四逆加呉茱萸生姜湯という処方がよく用いられます。
この処方はあまり身体を乾燥させ過ぎないよう工夫されている処方なので貧血(血虚)気味の方の手足の冷えが強い方にお勧めです。
ただ呉茱萸という生薬は苦みが強いので小さい子供さんは服用が難しいかもしれませんね^^
(良薬口に苦しといえども、私の場合中学生の娘に飲まそうとして、ひどく叱られてしまいました)
「冷え性には飲む以外の漢方も高い効果があるのでお勧めです!」
漢方医学では漢方薬を服用したり薬膳料理などで生薬を摂取する方法を「内治法」、薬物の貼付や按摩、鍼灸(鍼・灸参照)などの体の外側からの刺激によって、
治癒を図る治療行為を「外治法」といわれます。
ここでは家庭で簡単にできる漢方の外治法について解説したいと思います。
① 薬物を皮膚に貼り付ける方法
実は湿布にも温める種類のものがあるのをご存じですか?
これは温湿布といいドラッグストアや病院で手に入れることができます。
成分には唐辛子の成分が使われており皮膚の刺激作用により温感効果が得られます。
お風呂に入ると痛みが和らぐ方や冬の寒い日に古傷が疼く方などにお勧めです。
ただし唐辛子の成分なので皮膚の弱い方は普通の湿布よりもかぶれやすいので注意が必要です。
②火(お灸)を用いて刺激を与える
灸(きゅう、やいと)とは、艾(もぐさ=ヨモギの葉の産毛を陰干し・精製取得したもの)を皮膚上で部位を選択して燃焼させることによって
病態に治療的介入をおこなう伝統的な代替医療、民間療法です。
ヨモギも身体を温める作用があり、それに火の力が加わり経穴(つぼ)と呼ばれる特定の部位に対し温熱刺激を与えることで症状を改善してくれます。
セルフケアとして自己施灸も可能で、成形された各種の灸製品(例えば「せんねん灸」や棒灸など)を用いて手軽に治療を行うことができます。
ただし日本では医師以外の者が灸を業として行う場合は灸師免許が必要ですので注意してください。
③薬湯に身体を浸す(薬湯、足湯)
入浴自体が身体を温めてくれるので効果があるのですが、漢方薬を使った薬湯も非常にお勧めです。
内服する生薬のほとんどは薬湯にも使えるのですが、お勧めは簡単に手に入る乾燥したミカンの皮(陳皮)やヨモギの葉を入浴剤として使うやり方です。
・陳皮風呂
陳皮をハサミで2cmほどにカットし、目の細かい洗濯ネットに入れてお湯を入れた浴槽に浮かべましょう。
入浴剤として使う場合には、完全に乾いた皮でなくてもOKです。
香りも、よくリラックス効果のある入浴剤として楽しめます。
みかんの皮など柑橘類に多く含まれるヘスペリジンは、血流改善作用があることで知られ、血流が滞って冷え性に悩む人にも効果があることがわかっています。
・ヨモギ風呂
葉っぱの汚れをきれいに落とし、日陰干しにして乾燥させます。その後、乾燥したヨモギの葉を、ティーパック、布袋など20g~30g程詰めお風呂へ浸します。
タオルはヨモギの色が付くので専用のタオルにするなど気を付けてください。
ヨモギには血行促進や血行促進による肩こり、腰痛などの効果があり、他にも殺菌、止血作用があるので、肌トラブルの治療などにもよく使われます。
「冷え性に効くツボ」
冷えに効く簡単に押せるツボもあります。
合谷⇒手の甲側の、親指と人差し指のまたから少し入ったところにあり、押すと痛むところにあります。
陽陵泉⇒膝の外側の真横から少しだけ下の部分にあります。足の疲れなどにも効果的です。
陰陵泉 ⇒膝の下、内側の骨が、大きく曲がって細くなったところにあります。胃腸の働きを良くし、余分な水を出す働きもあります。
太衝⇒第一、第二中足骨の後端 接合部の前。足の甲を出し、親指の爪の脇(人差し指側)から、親指の骨に沿ってなぞると指が止まるところにあります。
このツボは血流から冷えを改善し、ストレスや眼精疲労にも効果があります。
いかがでしたでしょうか?
個人的には半身浴中にお風呂を手軽にグレードアップさせたいと思っていたので
陳皮風呂、ヨモギ風呂を試してみたいと思いました!
是非ご自分にできそうなことから、取り入れてみて下さい。